No.80 退去時の紛失物と残置物

ホテルでは、チェックアウトの手続き中に、客室の備品や設備に損傷がないか、忘れ物がないかを確認する退室点検が行われます。また、病院でも退院の際には、看護師さんが患者と一緒に病室を見回してチェックをするものです。アパートやマンションの賃貸の場合でも、解約時には借主と管理会社のスタッフが、「退去立ち合い」と称して部屋の明け渡しの確認が行われます(というか、賃貸の退去立ち合いの方が本家本元の気もしますが)。いづれにしても、具体的な手順は違えど多くの業界で占有されていた部屋の明け渡しの際には、室内の破損や汚損はもちろんのこと、備品の紛失や利用者の忘れ物のチェックが広く行われているものです。
そこで今回のお題は、退去時の紛失物と残置物。不動産、特に賃貸管理業界の退去立ち合い時の、紛失物と残置物のあれこれです。
先ずは、紛失物。紛失物と言っても、ホテルの備品のタオルやハンガーを欲しくて盗んで行くのとは異なり、賃貸の場合は無意識の内に転居先へ持って行ってしまうのが特徴です。なぜか水回りの備品が多いですね。
No.79 結婚部屋

不動産屋の裏話の賢明な読者であっても、結婚部屋と言われても一体何のことだかわからないと思います。Googleで検索してもヒットしませんし、ChatGPTに聞いても見当外れの答えが返ってきます。なぜなら入居した方が結婚を機に引っ越されて行く部屋に対し、センチュリー21石川土地建物の社内で勝手に付けたネーミングだからです。その昔、「寿退社」という言葉がありましたが、それの賃貸版でしょうか。
実際のところ、新築後7年半の間に3名の女性が入居され、全員がめでたくご結婚された部屋があるのです。他の多くの部屋には新築時より同じ方が住み続けているのに、なぜかこの部屋の住人だけは入居すると100パーセントの確率で結婚して引っ越されて行きます。
No.78 他人のための賃貸契約(賃貸物件の代理契約)

今日、弊社の事務スタッフより、先ほど賃貸物件を探しにお客様がいらっしゃいましたが、お断りしましたと報告がありました。なんでも90歳近い親を一人で住まわせるので、自分(来店されたお客様)が契約者になるので部屋を紹介して欲しいという内容でした。
弊社ではお断りをいたしましたが、このような契約を「他人のための賃貸契約」といって、貸主が承諾すれば、契約自由の原則に基づきそれ自体は有効です。大学に入学予定の未成年の子のために親が契約者となってアパートを借りるのが、かつてからある典型例の一つと言えましょう。でも、契約者は親ですから、子が成人しようと入居後の更新や解約の手続きも契約者である親が主体となり続けるので、手離れがとても悪いです。更新のたびに契約書を親元へ郵送したり、あるいは委任状の作成を依頼されたりで、管理会社としてもあまりやりたくないのが本音ではないでしょうか。