20年以上前に当サイトで掲載されていたコラム「不動産屋の裏話」がブログとしてここに復活。
不動産屋の古き良き時代から現在までをご堪能あれ。
No.68 大家の誤解(無料インターネット)
 近頃では賃貸物件のオーナー様(大家)も代替わりが進み、各種メディアを使って色々と勉強をされているようで、賃貸の知識に関しては、そこら辺の不動産屋よりもよっぽど詳しかったりするものです。「全国賃貸住宅新聞」とか「地主と家主」を見ると、入居者に人気の設備のランキングを頻繁に特集していますからね。それ以外でも、いろんなサイトで賃貸住宅設備ランキング202●みたいなのをやっていて、何気に活況を呈しています。

 まぁ、それはそれで間違ってはいないのでしょうが、捉え方によっては大きな誤解を生み出してしまいます。その典型的な例が「無料インターネット」。通信費がかからないから、さぞかし入居希望者が殺到するだろうなんて簡単に考えてはいませんか?特に若い人はお金が無いから喜ぶだろうなんてなめてかかると痛い目を見る可能性が大。同じ単身者用の物件とはいえ、ここ江戸川界隈でも家賃が30,000円台の物件から100,000円を軽く超える物件まで価格帯は玉石混交。なので、そこに住む人たちも色々なのに、単身者であれば誰もが無料インターネットに大喜びするに違いないというのが大きな誤解なのです。
 つまり、何を申し上げたいのかというと、一概に入居者に人気の設備といってもターゲットを間違えると大変なことになるということ。例えば先ほどの家賃が30,000円台の物件。若者が大喜びすると思いきや、この価格帯の物件には、そもそもネットを使わない高齢者も一定数住んでいるし、若い人も週のほとんどを働きづめなので、自宅でPCやタブレットを立ち上げてネットを楽しむような暇もなく、もっぱら携帯電話回線でネットを見る人が大多数だったりするものです。

 転じて家賃が60,000円台から70,000円台の物件。単身者用としてはボリュームゾーンですが、大家さん、ちょっと思い出してみてください。無料インターネットを導入する前に、いったいどれくらいの割合の入居者が有料でネット回線を導入していましたか?せいぜい2割とか3割程度ではないでしょうか?そう、実は頑張ってネット回線を引かなくても、安いポケット型WiFi等で十分に間に合ってしまうので、単身世帯のネット回線の普及率なんて元々その程度なんですよ。だから、無料インターネットを導入して入居率アップとか賃料アップとか、くれぐれも誤解のないようにしてください。
 そして、単身者用でも家賃が100,000円を超えてくるような物件。入居者には上場企業やそれに準じる組織のスタッフも多く、プライベートでの利用のみならずリモート勤務も多いので、ネット環境の充実は必須です。そこで大家さん曰く、そういうことか!入居者に人気の設備もターゲット選びが重要って言ってたよな。家賃100,000円超の高価格帯の入居者こそが無料インターネットのメインターゲットなんだ!!いやいや、これも誤解です。インターネット無料物件の多くは、大家がインターネット回線をマンションやアパート全体でプロバイダーと契約し、1つの回線をすべての部屋で共有して使用します。要は、無料インターネットはセキュリティの確保に懸念があり、回線スピードは遅く、通信品質が不安定ということ。

 実際のところ、今では高価格帯の物件を内見されるかなりの数のお客様がはっきりとおっしゃいます。「自宅で仕事をするので、無料インターネットではなく、有線で専用回線を引ける物件を選ぶように会社から言われている」と。