20年以上前に当サイトで掲載されていたコラム「不動産屋の裏話」がブログとしてここに復活。
不動産屋の古き良き時代から現在までをご堪能あれ。
No.65 オーナー審査
 「オーナー審査」ってご存じですか?読んで字の如く、賃貸物件の入居の可否について、その物件のオーナー様が審査をすることです。
 とは言え、オーナー様が入居希望者と直接面談する訳ではなく、ほとんどが書類上の審査です。元々、店頭接客の段階で入居条件に適うお客様だけがご紹介されますので、入居可能日が早い人がいいとか、部屋を汚さないから女性がいいとか、その程度の基準でご判断されることが多いです。まぁ、普通のオーナー様は、「センチュリーさんがお客さんと直接会っているのだから、石川さんに任せるよ」と言ってくれますが…。
 このオーナー審査ですが、意外と入居希望者には知られていないものです。入居審査は保証会社の審査だけだと思っている人が多いですね。でも募集を行っているのが仲介会社ではなく管理会社の場合、お客さんには敢えて言わないだけで、オーナー審査は常に行われています。書類をご覧いただき「このお客様ですが、契約してもいいですか?」って絶対に確認します。
 ただ、通常はひっそりと行われるオーナー審査ですが、初めから入居希望者に審査の実施を公言することも稀にあります。その典型例が、ひとつの物件に複数の希望者が集中してしまう時。
 Webを見て興味深い物件があると、たいていのお客様はメールや電話で事前に連絡を下さり、スタッフが詳しい入居条件を説明したり、あるいはお客様のご希望を伺って入居の可能性について擦り合わせが行われます。そのような過程を経てからお客様には内見の予約を入れていただくのですが、仕事が休みの週末しか時間が無かったり、地方から飛行機や列車のチケットを取って上京したりと直ちに内見ができないのが一般的です。皆さん、それぞれご事情がありますからね。
 こんな時に、一定の内見できる期間を定め、その期間中に入った申し込みの内容をオーナー様にご覧いただき、最終的な判断をしてもらうのです。なぜって、先着順での申し込みの主張や、それに伴う内見無しでの申し込み、物件の取り置き等の依頼が必ず入るからです。特に、突然アポなしで来店し直ちに内見を要求されるお客様。昔はそういうスタイルが主流だったのかもしれませんが、今は予約を入れて内見するのが業界のスタンダード。他の人より早く内見し先に申し込みを入れたからといって、必ずしも優先的にお目当ての物件に入居できる訳ではありません。あなたが突然来店される以前から、スタッフと打ち合わせをして内見の準備をされている方がたくさんいらっしゃるのです。こんな時は、オーナー審査を然るべき時に行い、オーナー様が希望する方と商談を進める旨をお伝えすることとなるのです。

 不特定多数の仲介会社に客付けを依頼している、いわゆる流通物件については、複数の仲介業者が競合関係となるため、先着順の申し込みや、内見無しでの申し込みといった業界の悪習も理解ができない訳ではありません。しかしながら(賃貸)契約というのは、契約自由の原則に基づき「申込み」と「承諾」との合致によって成立するものですから、少なくとも弊社の管理物件については、声の大きい人や押しの強い人の主張よりも、然るべき過程を経て事前に準備をされてきた方との双方の信頼関係を元に対応することこそが、物件を所有するオーナー様、物件を管理する弊社、そして物件を生活の拠点とされている既存の入居者様の利益に貢献すると考えています。