20年以上前に当サイトで掲載されていたコラム「不動産屋の裏話」がブログとしてここに復活。
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No.69 大家の誤解(温水洗浄便座)
No.69 大家の誤解(温水洗浄便座)
 前回の、No.68 大家の誤解(無料インターネット)と同様に、賃貸物件の入居者の誰もが喜ぶに違いないと大家さんが思ってしまうのが温水洗浄便座。いろんなメーカーから出ていますが、TOTOでいえばウォシュレットのことです。

 賢明な読者の皆様は何となく体感的にお察しかと思いますが、この温水洗浄便座、男子は総じて大好き。温水洗浄便座が設置されていない物件だと、後付けでも家電量販店へ行けば15,000円から25,000円程度で販売されているので、ご自分で取り付ける方もかなりいらっしゃいます(もちろん退去時には原状回復をしてもらいますが)。    
 対して女子からは温水洗浄便座が賃貸物件選びの必須アイテムという話は滅多に聞きません。内容が内容だけにお客様には特には聞きませんが、弊社のスタッフに尋ねてもあまり好意的な反応はありません。
 大家さんから温水洗浄便座の設置について相談を受けると以上のような傾向がある旨をお伝えするのですが、大抵は、ならば使いたい人が使えばいいので、賃貸物件の魅力度アップのためにひとまず付けておこうという考えに至ります。まぁ、それはそれで良いのですが、問題となるのはその後です。

 機械類は何でもそうですが、温水洗浄便座も設置して5年も経つといろいろな不具合が出てきます。メーカーのアフターサービスに修理を依頼しても工賃が高く、簡単な動作不良程度の修理でも家電量販店で新品の温水洗浄便座を購入するのと同じくらいの費用が掛かります。ましてや基板を交換するとなると、量販店での販売価格を軽く超え、その2倍くらい掛かることもあるほどです。
 そのため、最終的には新品交換となることが多いのですが、これも業者に依頼すると工賃込みで少なくとも量販店での販売価格の2、3倍はするものです。つまり、温水洗浄便座は家電量販店で購入して自分で設置する分にはすごく安いのですが、いったん使ったものを修理したり交換したりして他人の手を煩わすと、工賃がとても高くつくという事実があるのです。もっとも、家電量販店と住宅設備会社では流通の仕組みが異なるので、その違いといえばそうなのかもしれませんが、本質的な部分はちょっと違うような気がします。つまり、道義的に口外をはばかられるのですが、要は使用中の温水洗浄便座を手で触るような汚い作業は、一般的に工賃が高いということです。

 結論としては、賃貸物件への温水洗浄便座の設置は他の設備と同様に、それを好む人と好まない人がいること。ご自分で作業を行う以外、温水洗浄便座の修理や交換はそれなりの費用が掛かるもの、と覚えておいてくださいね。