20年以上前に当サイトで掲載されていたコラム「不動産屋の裏話」がブログとしてここに復活。
不動産屋の古き良き時代から現在までをご堪能あれ。
No.62 作りたい女と食べたい女(ルームシェア)
No.62 作りたい女と食べたい女(ルームシェア)
 NHKの夜ドラで「作りたい女と食べたい女」という番組が放送されているのをご存知でしょうか。同じマンションに住む料理を作るのが大好きだが少食の女性と、豪快な食べっぷりの女性が、2人で料理を作って食べることで関係を深めていくストーリーです。これ、意外とおもしろくて、何気に毎晩見てしまっています。
 昨夜は、その第27回目で、いよいよ一緒に暮らそうと部屋を借りるために2人は不動産屋を訪れました。ところが、二人入居可の目ぼしい物件を見つけて興味を示しても不動産屋のお兄さんは遠回しに断るばかりで、やたらと「ルームシェア可」の物件ばかりを勧めてくる。そして不動産屋の兄さんから、二人入居可という条件が、家族や建前上結婚を前提としたカップルに限定されていることが多いと知らされ、女性同士のカップルの2人は意気消沈してしまうという展開です。何でも、不動産屋が大家さんに入居者の説明をする際、同性同士のカップルだとあまりいい顔をしてもらえないからというのが理由だそうで…。
 これ、完全に間違っていると思います。弊社はもちろん、恐らく日本中の多くの不動産屋は、入居者が同性同士のカップルであるとか、あるいはLGBTQ+のカップルであるとか、気になんかしていません。
 じゃ、なんで不動産屋の兄さんは「ルームシェア可」の物件を勧めたのかって?それはね、優良な物件でルームシェアをされるのが嫌だからです。男女のカップルであろうが同性のカップルであろうが、家賃が12万円の物件に支払い能力が6万円しかない人が2人で力を合わせて住まれるのが嫌なんです。だって、カップルのひとりが家を出てしまったら、残りの人の支払い能力では賃貸契約を継続していくことができないじゃないですか。賃貸経営で利益を上げるには入居者に長く住んでもらうのが基本ですから、カップル間の付いた離れたで短期解約に付き合わされるのがいちばん困るのです。そんなことが起きると、それこそ大家さんから嫌味を言われてしまいます。「ルームシェア可」という特典は、どちらかと言えば不人気な物件に短期解約のリスクを負ってでも入居させたいために大家の承諾のもとに付与しているので、ルームシェアをされそうなお客が来たら、トラブル回避のためにそちらへ誘導するのは不動産屋なら当然です。
 ならば、「作りたい女と食べたい女」の2人はどうすれば良かったかって?やはり2人のうちの契約者となる予定のどちらかが、単独でも家賃を支払い続けられるような立派な収入証明書を提示して、残るひとりはただの同居人といったスタンスで、できれば2人で一緒に不動産屋へは行かない方が良かったですね。また、これは基本中の基本ですが、不動産屋を訪問するときは事前にメールでアポを取り、然るべき事情がある場合は担当者に伝えておけば良かったのではないでしょうか。