20年以上前に当サイトで掲載されていたコラム「不動産屋の裏話」がブログとしてここに復活。
不動産屋の古き良き時代から現在までをご堪能あれ。
No.70 大家の誤解(入居者の新築物件志向)
 賃貸物件の大家さんが抱いている最大の誤解のひとつが、入居者の新築物件志向。大家さんと話をすると、次々と新しい物件が建っていくのでご自分の物件はどうなってしまうのだろうと口々におっしゃいます。確かに近年の不動産投資ブームにより、サラリーマン家主を対象とした収益物件(賃貸アパート・マンション)がいたるところで建てられているのを目にします。この手の案件は、収益物件の新築・販売を生業としている専門業者が手掛けているので、最新設備が導入されて賃貸戸数が多く、それなりに見栄えもするので、築年数の経った既存物件をお持ちの大家さんには大変な脅威として映るのでしょう。幼い頃から快適さに慣れ親しんだ若者達は、わき目もふらず最新の新築物件に飛びついていくのではないか…、と。

 不安を抱えている大家さん!不動産屋の裏話 №68はご覧になりましたよね?近頃の若者は、昔と違って一筋縄ではいきません。もちろん同一の家賃と立地で最新設備の新築物件と築20年の既存物件があれば、お客は前者へ飛びつくに決まっています。
 でもね、新築物件と古い既存物件が同じ家賃で勝負する訳が無いでしょ?賢明な読者の皆様はとっくにお気付きかと思いますが、新築物件の方が家賃が高いに決まっています。もっと率直に言うと、新築物件は家賃の値下げができません。だって、こんなに地価が高いのに、これまた高い建築費でアパートを建て、しかも業者の利益を乗っけて販売しているのですよ。それを購入した家主さんは安い家賃で貸せる訳がありませんよね。
 転じて最近の若者。幼い頃から快適さに慣れ親しんできたとは言えども、日本が経済的に貧しくなった「失われた30年」に人生の大半を費やしてきたのも事実で、その間に急速に普及した、いわゆるシェアリングエコノミーにもどっぷりと浸かってきた世代です。シェアリングエコノミーでは、所有することよりも必要なときに必要な分だけ使用できる体験価値が重視されます。また、今は消費者嗜好(しこう)がモノ消費(高価なモノを所有)からコト消費(必要なタイミングで使用する体験価値)へ変化しつつあります。
 なので賃貸物件に置き換えると、部屋の広さや清潔さ、プライバシーの確保など一定レベルの快適さは不可欠であるものの、家賃を押し上げる要因となる「新築」という肩書は彼らにとっては過分であり、その分のお金を自分の好きなコトをするのに使いたいという消費者意識の変化の認識がポイントとなるのです。
 既存物件をお持ちの大家さん!もう不安は吹っ飛びましたかね?昨今の若者の多くは、辛い思いをしてまでも新築物件に住もうなんて思っていませんよ。新築物件の入居は、上場企業に勤めているような高額な給料や住宅手当をもらっている一部の人達に任せておけば良いのです。
 じゃあ、既存物件の大家はどうすればいいのかって?さっき新築物件は家賃を下げられないって言ったじゃないですか。だったら対抗上、先ず家賃を下げましょう。そして一定レベルの快適さを確保できるように物件を改装するのです。リノベですよ。リ・ノ・ベ。建築費の返済が終わっている既存物件だからこそ柔軟に家賃を下げられるし、リノベーションにかける経費も出るのです。安くて広くて快適ならば、築年数が経っていてもお客さんが付かない訳がありません。最後は宣伝になってしまいますが、センチュリー21石川土地建物では、リノベ物件の入居率は、ほぼ100%です。