No.4 守秘義務と事実告知の義務の矛盾(後編)
前回のつづきで、守秘義務と事実告知の義務のどちらを優先させるかについてお話しします。例えば前の入居者がアパートのその部屋で首を吊って死んだという事実がある場合、事実告知の義務にもとづいて、それをお客さんに伝えるべきなのでしょうか?それとも、秘密にしていた自殺のあった部屋が大っぴらになってしまったら、大家さんの不利益になるので、守秘義務にもとづいて伏せておくべきなのでしょうか?あるいは、首吊りがあって気味が悪いのは精神的な問題であって、トイレの流れが悪いとか上の階の足音が響いてうるさいというような、物件の構造上の欠陥とは異なるので、取引上重要な事項には該当しないので、守秘義務も事実告知の義務も適用されないのでしょうか。
まぁ、いろいろと見解の別れる所でしょうが結論を申し上げますと、事実告知の義務が優先します。この義務の履行により、ほかの依頼者の秘密を漏らすことになる場合でも、秘密保持の義務違反は問われないとされているのです。もちろん前入居者のそのような事実も、取引上重要な事項に該当します。したがって、もし前入居者が首を吊った事実を不動産屋がお客さんに告げずにアパートに入居させたなら、それは紛れもなく宅建業法47条に違反することになるのです。
ところで、自社の管理する賃貸アパートの部屋でそのような不幸なことが起きてしまったら、我々不動産屋はどうすればいいのでしょうか?不動産屋をやっていれば多かれ少なかれ似たようなことは起きるものです。気が重いからと何もしなければ不動産屋の商売は始まりません。大家さんだって、家賃でローンを返したりそれぞれ事情があるのですから、そういう部屋をいつまでも空けている訳にはいかないのです。いったい、こんな部屋はどのようにして処理されていくのでしょうか?このつづきは、不動産屋うらばなし「実務編」ということで次回にお話しいたします。
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