No.10 業界隠語暗号編(その4)
No.9 業界隠語暗号編(その3)で不動産屋はお金が大好きだということを申し上げましたが、今回もお金にまつわる話題です。突然ですが「あんこ」って知ってますか?えっ、昭和を代表する国民的演歌歌手、都はるみと関係があるのかって?まったく関係ございません。じゃあ、お餅とかパンの間に入ってる甘くて黒いヤツじゃないのかって?確かにそうですが、不動産屋は「あんこ」は嫌いなんです。実際のところ不動産屋は酒飲みが多いから、甘いものはあまり好きではないでしょう。でも、どこかの会社の相談役のように、酒飲みだけれども甘い「あんこ」も大好きで、糖尿病になってしまった人も中にはいるものです。
今回は「あんこ」は「あんこ」でも、不動産屋が嫌がる「あんこ」についてです。不動産屋はお金が大好きですから、彼らが嫌がるということは、イコール収入の減少を意味するのです。毎回申し上げておりますが、不動産屋のうらばなしを見て下さっている賢いみなさんはもうお気づきになったことでしょう。そう、その収入の減少の形態が「あんこ」の意味なのです。
具体的にいうと、例えば不動産屋Aに6DKで家賃50万円のマンションを借りたいというリッチなお客さんがいるとします。でも江戸川の小岩あたりじゃ、そんなにハイグレードな賃貸物件はそうそうあるものじゃございません。そこで不動産屋Aは、友人の不動産屋Bに相談したところ、「ある!ある!歌手の○○が二号さんを住まわせていた6DKが先週空いたばかりだよ」という嬉しい返事をもらい、お客さんも気に入って、不動産屋Aと不動産屋Bは仲良く(仲介)手数料を2人で分けたとします。まぁ、これが賃貸取引の最もよくある典型です。でも、不動産屋Bがもしこう言っていたらどうなるでしょう?「ある!ある!歌手の○○が二号さんを住まわせていた6DKが先週空いたばかりだって、不動産屋Cが言ってたよ」。こうなってしまうと、当事者の不動産屋AおよびCと、ただ口を利いただけの不動産屋Bが3人で手数料を分けなければなりません。そうなんです。不動産屋Bが、ちょうどお餅に挟まった「あんこ」のような状態で割り込んでくるために、不動産屋1人あたりの手数料が少なくなってしまうのです。だから不動産屋は「あんこ」が嫌なんです。特に高額物件の取引ともなると、さらに不動産屋Dとか不動産屋Eが荒野のハイエナのように匂いを嗅ぎつけ、「実は俺がBをCに紹介したんだ」とか「俺はBの専属ブローカーで本当は自分が口を利いたんだ」なんて言いながら次々と間に入って来るものです。そうなると、大福餅の「あんこ」どころではなく、昔パン屋さんで売っていた「シベリアサンド」のように「あんこ」が幾層にも重なって、手数料はどんどん少なくなってしまうのです。