No.23 不動産屋を支える職人さん達(各論その2)
今回の不動産屋を支える職人さんは、畳屋のYさんです。Yさんは頑固一徹の畳職人で、その腕が良すぎるために、忙しすぎてお客さんからの指名注文をさばききれないのが現状です。その腕を買われてヤクザの親分の畳の座布団を縫わされたり、一方では警察の柔道場の畳の注文を受けたりと大忙し。でも、義理と人情を何よりも重んじるYさんは、数十年にもおよぶ当社との付き合いを大切にしてくれて、いつでも嫌な顔ひとつせず要望に答えてくれるのです。このYさん、はっきり言って賃貸アパートの畳を縫うような職人さんじゃありません。畳と言うのはそれこそピンからキリまであって、その建物のグレードによって、トコ(畳の中身)も違えばオモテ(表面のゴザの部分)も異なるものなのです。ですので注文建築の豪邸にふさわしいもの(すべて天然素材の一級品)がある一方で、アパートやマンション用のものは、通常はポリウレタンのトコにオモテを貼った規格化された工業製品なのです。
でも、Yさんは昔気質の頑固な畳職人です。たとえアパートやマンションに入れる畳でも、そんな妥協を許すわけないじゃないですか。しっかり天然のトコ(毎月、栃木県までトラックで買付に行く)を使って、なんと全部手縫いで仕上げているのです。しかもYさんは自ら現場に畳を敷きに行きます。畳の角がピッタリ合わないと納得できないので、決して若い衆に行かせたりしないのです。家賃3万円台のアパートに、ここまでやるかという感じです。
だけどこのYさんの職人気質には、当社としてもちょっと困ってしまうところがあるのです。まぁ、Yさんだけに限ったことではないのでしょうが、畳を入れ替えた部屋一面をすべて新聞紙で覆ってしまうのです。自分の敷いた畳が日に焼けてしまうのが許せないのか、お客様にベストの状態の畳を提供したいのか理由は定かではありませんが、その部屋を目の当たりにするとちょっと異様な雰囲気を感じます。お客様に部屋をご案内する立場としては、新品の青々とした畳がお出迎えしてくれた方が有り難いのですが…。やっぱり新聞紙を敷き詰められた部屋って、何かを隠蔽しているようで正直言って感じ悪いです。