No.5 守秘義務と事実告知の義務の矛盾(実務編)
例えば前入居者が首を吊った部屋のように、取引上重要な事項に該当するようなできごとがあった場合、我々不動産屋は宅建業法47条にもとづいて、お客さんにその事実を告知しなければならないことはお話ししました。けれども一般のお客さんは、不動産屋がそんなこと正直に言う訳が無いと思っていることでしょう。それが証拠に、部屋を案内すると、「この部屋で自殺とかありませんでしたぁ?」という方がかなりいらっしゃるものです。まぁ、確かに不動産屋って、海千山千のとんでもない人達がいっぱいいますから、そんな風におっしゃるのもわからなくはないのですが…。
実際、この義務がちゃんと守られているかどうかの真相は藪の中でしょうが、私の個人的な感じでは、意外としっかり告知がなされていると思います。なぜって弊社のような下町で何十年もやっている不動産屋の場合、お客さんを騙して入居させたことが発覚して信用を失ってしまう方が、よっぽど困るのです。ましてや小岩あたりの下町だと、事件や事故のうわさなんてものすごいスピードで広がるので、入居者に秘密にしておこうとしたって、そんなことは事実上不可能なのです。
じゃあ、どうするのかって?世の中、捨てる神あれば拾う神ありです。意外に思われるかもしれませんが、長く不動産屋をやっているといろんなお客さんに出会うもので、そういう事件、事故のあった部屋でも家賃が安ければ構わないと言ってくださる方が結構いらっしゃるのです。ただ単に、そういうことをまったく気にしない方もいれば、職業柄、事件や事故に日常的に接していて一般の方よりも冷静な気持ちでいられる方も少なくありません。多少時間はかかりますが、そういうお客さんに喜んで入居していただければ、みなさんが思われるより、この問題は以外とすんなり解決してしまうものなのです。なお、参考までに申し上げますと、そういう部屋の家賃は通常の場合の70パーセントくらいで表示され、値切ればもっとディスカウント…。この辺で、やめときます。
※このページでは、当サイト開設当時(平成12年頃)の名物コラム「不動産屋のうらばなし」に掲載された過去ログを便宜的に表示していますので、時代の変化、および法令改正や省庁のガイドラインの変更などにより、現在の情勢とは異なる記述がございます。また、利用者の特定の目的に適合すること、有用性、正確性を保証するものではなく、掲載内容についてのトラブル等、いかなる責任も負いません。あらかじめご了承ください。