20年以上前に当サイトで掲載されていたコラム「不動産屋の裏話」がブログとしてここに復活。
不動産屋の古き良き時代から現在までをご堪能あれ。
No.72 賃貸物件の入居時必要書類
No.72 賃貸物件の入居時必要書類
 今回は、No.71 賃貸物件の入居時初期費用に続き、入居時シリーズの第2回目。賃貸契約を結ぶ際に、不動産屋から提出を求められる書類です。
 では、何で書類を出してもらうのかって?主な理由はこの3つ。1つ目が契約者の本人確認。2つ目が入居申込書の記載内容の担保。そして3つ目が入居審査の一環、としてではないでしょうか。

 入居時必要書類は別に法定の書類ではないので、書類の種類は各不動産屋の裁量に委ねられるのですが、まぁ、どこも同じようなものでしょう。

 先ず、大抵の不動産屋で提出を求められるのが「住民票」。いわゆる「住民票の写し」です。役所にある住民票原本は持ってこられないので「住民票の写し」となります。ただし、近頃はプライバシー保護の観点から、むしろ「住民票記載事項証明書」の提出が推奨されています。不動産屋としては本人確認と入居申込書の記載内容の担保が目的なので、どちらでもいいような気がしますが、従前の住所が入居審査の判断基準とされる恐れを懸念するようであれば、「住民票記載事項証明書」にしておいた方が無難かもしれませんね。

 それから、顔写真の付いた公的証明書。運転免許証やパスポート、マイナンバーカード等です。もちろん本人確認用に使います。でも、時々、これらの書類をまったく持っていない方もいらっしゃいます。そんな時はどうするのかって?卒アルですよ。卒業アルバム。もちろん新卒者やそれに準じる若い方に限定としますが…。公的な書類ではないけれど、部屋を借りることなど思ってもいない学生時代に作ったものなので、変な証明書よりもよっぽど信頼に値します。賢明な読者の皆さんでもなかなかピンと来ないかもしれませんが、この世の中、様々な事情により本名で生きていない人って結構いるものです。
 次が印鑑証明書。印鑑証明書は不動産屋によって必要だったり不要だったりするものです。契約後にトラブって、この印鑑は自分が押したんじゃない、不動産屋が勝手に押したんだ、なんて言われると困りますからね。でも、そんなことよりも、むしろ不正の抑止効果の方が大きいかも。印鑑証明書の記載事項は前述の住民票等の記載事項に含まれているので、印影以外は不動産屋にとって特に目新しいものではありません。では何が不正の抑止に役立つのかというと、印鑑証明書の発行に必要な印鑑登録を役所が直ちに受けない場合があること。つまり、住所地のある自治体で印鑑登録をしようと役所へ行くと、役所からあなたの住所地にはがきを送るから、悪いけどそれを持って改めて登録に来てね、とするケース。どんな運用をしているのか私は知りませんが、恐らく居住の事実を確認しているのでしょう。はがきが住民票等に記載された住所地に送達され、それを役所に持参できれば、一応はそこに住んでいることを確認したことになりますからね。なので、印鑑証明書を不動産屋に出せない人も一定数出てくる訳です。空き家等の適当な場所へ住民異動届を出して住所を作り、その住所地が記載された印鑑証明書を悪事に使われると、証明者である役所も立場が無いのでしょう。不動産屋としては、そんな悪事を働くために作った住民票等と印鑑証明書を賃貸契約に使われないように、本人確認をしっかりと行う必要があるのです。
 最後が収入証明書。一般的には源泉徴収票や確定申告書の控え、役所が発行してくれる所得証明書、課税証明書の類です。よくある給与明細書3ヶ月分とかでは、あまり受けたくないですね。職場と共謀すればいくらでも作れてしまうし、最近じゃ従業員用にWebへ明細を上げる企業も多いので、それをダウンロードして持ってこられても、支払者名が書いてなかったり、あるいは業務ソフトの給与明細のフォーマットに自分で数字打ち込んだ様なのもあって、どうなの?って感じです。ただ、最近は保証会社の審査の精度も上がってきているので、収入の多寡よりも、むしろ就業事実の確認の意味合いが大きいのかもしれません。

 何だか今回は入居時必要書類の説明ばかりでちっともおもしろくないって?
はい、はい、ここからが本当の不動産屋の裏話。でも長くなってしまったので、次回、No.73「不動産屋は必要書類のどこを見ているか」に続きます。乞うご期待!