不動産屋の裏話

　今回のお題は、宅配ボックス。以前にも、不動産屋の裏話 No.53で、実は、宅配ボックスの操作ができない人は、入居者様よりも宅配業者のドライバーさんに多いことを書きました。とはいえ、入居者様も色々とやってくれます。中でも不動産屋を悩ます問題の一つが、荷物の長期滞留です。

　荷物の長期滞留というのは、読んで字のごとく、宅配業者のドライバーさんが宅配ボックスの中へ入れた荷物を、その受取人である入居者様が長期間にわたり取り出さず、結果的に他の入居者様へ迷惑をかけ続けている状態のことを言います。

　ところで宅配ボックスは、今や賃貸物件には無くてはならない人気の共用設備で、その設置が賃貸の募集活動に大いに貢献していることは管理会社としても承知しています。なのでセンチュリー21石川土地建物でも、最近の新築物件では初めから標準装備がされていますし、既存の物件でも入居率アップを狙って後付けで設置されるオーナーさんが増えています。

　そんな宅配ボックスですが、操作方法で大別すると、電気式（デジタル式）と機械式（アナログ式）があるのをご存知でしょうか？電気式（デジタル式）というのは、宅配業者さんが不在通知を入れておきさえすれば、後は入居者様が自分の部屋番号と暗証番号を使って宅配ボックスの扉を開けるだけ。なので不動産屋の裏話 No.53のような宅配業者さんによる暗証番号の誤記入もないので、管理会社としては超ラクチン。日々の管理の際は、管理者モードで入って自動でエラーチェックをかけたり利用履歴の確認をするだけ。もちろん、荷物の長期滞留も検知して知らせてくれます。

　転じて機械式（アナログ式）の宅配ボックス。電気式（デジタル式）と比べて設置費用が格段に安いので、オーナー様には大人気。でも管理会社としては、普及し過ぎるのは末恐ろしい。だって暗証番号の誤記入が起きるたびに非常用のキーを持って荷物を出しに行かなければならないし、非常用のキーで荷物を出したら誤入力された暗証番号を解読し、さらにリセットし直さなければなりません。そして最も深刻なのが、まさしく荷物の長期滞留。電気式（デジタル式）みたいに自動で検知して知らせてくれたりなんか出来っこありません。おいおい、お前ら管理費をもらっているんだから、それぐらい文句を言わずに対応しろって？いやいや、個別の宅配ボックスに同じ荷物が何日間入っているかなんて管理会社が把握している訳ないでしょ。

　機械式（アナログ式）の宅配ボックスの場合、荷物の長期滞留は通常は１つのボックスで起きただけでは発覚しません。病気と同じで症状が進み、すべてのボックスに荷物が入ったままとなり、新たな荷物を入れられなくなって初めて大騒ぎとなるのです。でも、よく考えてみて下さい。長期滞留を起こすルーズな人がそんなに大勢いると思います？はい、いつも不動産屋の裏話を読んでくださっている賢明な読者の方は、もうお分かりですね。長期滞留を起こす人がたくさんいるのではなく、長期滞留を起こす人の荷物がたくさん入っているのです。

　いちばん酷いのが、ネット販売（「EC」とか「eコマース」）を行っている人による返品の山。メルカリのヘビーユーザーも同等ですが、賃貸物件の僅かな宅配ボックスなんて直ぐにパンパンになってしまいます。そして最近気づいたのが、重たい荷物を運べない（運びたくない）ことによる放置。在宅時に宅配業者さんが自室まで運んでくれることを目論んで大量のペットボトル入り飲料を通販で購入したものの、宅配ボックスに入ってしまった重たい段ボール箱を部屋まで運ぼうとせず長期滞留となるケース。宅配ボックスはすべての入居者様が利用する共用設備なので、くれぐれも節度のある使い方をお願いいたします。