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No.75 春の繁忙期の総括(2025年)
No.75 春の繁忙期の総括(2025年)
 不動産屋の裏話へのロイヤリティが高い読者の皆さん、たいへん申し訳ございませんでした。年末の多事多端と春の繁忙期にかまけて約半年ぶりの復帰です。

 今回は、春の繁忙期の総括(2025年)ということで、1月から3月までの賃貸仲介の傾向を振り返ってみようと思います。

 先ず、賃貸物件の問い合わせ件数ですが、今年の春は例年以上に多かったかも。とはいえ特定の物件に問い合わせが集中してしまい、人気のない物件はさっぱりで、均してみると入居希望者との条件面でのミスマッチが際立ち、事業としては例年並みか、それ以下といった印象です。つまり、弊社が提供する物件やサービスが、顧客のニーズや期待と合致していない状態が頻発していたのだと思われます。

 そんな顧客との条件面でのミスマッチですが、その最たるものが、内見無しでの申し込み。物件の案内もせずに契約が取れたらラッキーだと思う方もいるかもしれません。いやいや、何か勘違いをされていませんか?電話やメールで物件の取り置きをされたら、これから内見をして入居の判断をしたい、いわば通常のプロセスを踏むお客様の機会を奪ってしまうことになりますよね。もちろん弊社では内見無しでの申し込みは受け付けませんし、もっと言わせてもらえば、こちらもあなたがどんな方かを見たいです。賃貸管理を続けて行く上で、自社の物件にそぐわないと思われる方を入れたくないですから。
 内見無しでの申し込みに関連して多かったのが、契約するから駐車場の空席の番号を教えろという方。これについても電話やメールで空いている場所は教えません。どうせ今晩友達が遊びに来たらそこに無断駐車するんでしょ?駐車場の空席は、商談でご来社された時にお話しいたします。

 そして特に多かったのはオンライン内見を希望の方。残念ながら弊社は管理会社で法定の仲介手数料しかいただきませんので、オンライン内見はやりません。これってどういう意味かお分かりになりますか?不動産屋の裏話をお読みいただいている賢明な読者の皆様は既にお察しかと思いますが、オンライン内見はお客様にとっては効率が良いかもしれませんが、不動産屋にとっては効率が悪く儲からないから。だって不動産屋のスタッフが時間を割いて物件に赴き通信料を負担してオンライン内見を実施したところで、物件が気に入らなければそれでおしまい。もし気に入ったとしても再度、実際の内見に付き合わなければなりません。管理会社は仲介会社とは異なり仲介手数料とは別に広告料(いわゆるAD)を通常は貰えませんので、とてもペイできる代物ではないのです。こんな理不尽に付き合うのだったら実際に物件を見に来てくれるお客様に尽くした方がよほど良いです。
 理不尽ついでに本当にムカつくのが、引越しのフリー便の作業時間に合わせて解約立ち会いを求める輩。詳細は、不動産屋の裏話 Nc.67 引越しのフリー便と退去立ち合い に書いてありますが、これを春の繁忙期に主張してくる世間知らずには腹が立ちます。対応できる訳ないでしょ。こういう人に限って、Googleの口コミに融通が利かないとか書き込むものです。

 最後に、女性を対象とした物件なのに内見させろという男。本人の代理で男性の親族が問い合わせてくるケースもあったりするし、昨今はジェンダーによる区別にも細心の注意を払う必要があるので門前払いをしないでいると、思わぬとばっちりを食うことになります。今回の2025年の春の繁忙期には、女性入居希望の物件に男性からの問い合わせが殺到し、ひどい目に遭いました。ちゃんとウェブに女性入居希望って書いてあるでしょ。ポータルサイトのLIFULL HOME'Sって広告の掲載料を反響課金(問い合わせ1件につき●,000円)されるんですよ。たまったものではありません。

 いつの間にかブーイング大会になってしまいましたが、入居希望者との条件面でのミスマッチに手間を取られてしまったのは、2025年の春の繁忙期の大きな反省材料です。ただ、ちょうど3日前の2025年4月1日に東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が施行されましたので、この状況が徐々にでも収まることを期待してやみません。