不動産屋の裏話

　不動産屋の裏話の賢明な読者であっても、結婚部屋と言われても一体何のことだかわからないと思います。Googleで検索してもヒットしませんし、ChatGPTに聞いても見当外れの答えが返ってきます。なぜなら入居した方が結婚を機に引っ越されて行く部屋に対し、センチュリー21石川土地建物の社内で勝手に付けたネーミングだからです。その昔、「寿退社」という言葉がありましたが、それの賃貸版でしょうか。

　実際のところ、新築後7年半の間に3名の女性が入居され、全員がめでたくご結婚された部屋があるのです。他の多くの部屋には新築時より同じ方が住み続けているのに、なぜかこの部屋の住人だけは入居すると100パーセントの確率で結婚して引っ越されて行きます。

　そんな結婚部屋ですが、幸せいっぱいの喜ばしい話であるうえに、不動産屋としては何回も仲介手数料がもらえるのでとにかく大歓迎です。しかも長期入居ではないので部屋も傷まないし、ポジティブな理由による引越しなので退去時のトラブルも皆無。本当に良いことづくめです。

　とは言え、ある特定の部屋だけに幸せが集中するのは何かがヘン。例によってその原因を考察してみました。

A. 風水の観点から物凄く恋愛運を上げる間取りになっている。特に玄関は余計な荷物を置かずに済むよう大型のシューズインクローゼットを備え、淡いピンク色の壁紙で明るくコーディネートされているので、良い「気」が流れている。

B. 物件の目の前が某大手総合商社の独身寮で、夜間、コンビニへ買い物に出るたびにそこの住人から挨拶をされ、自然と親しい関係になってしまう。

C. 人気物件につきオーナー審査を実施して入居者を選考するため、資産家のオーナー様のお眼鏡に適う行儀の良い良家の子女ばかりが住んでいて、相対的に嫁ぎ先には引く手あまたの状態になっている。

　さあ、正解はどれでしょう。