No.3 守秘義務と事実告知の義務の矛盾(前編)
前回、前々回と不動産屋には「守秘義務」というのがあって、職務上知り得た秘密をむやみに人に漏らしてはならないということをお話しいたしました。ところが、それとは反対に「事実告知の義務」というのもありまして、宅建業法47条にしっかり規定されています。どのようなことかといいますと、取引の相手方等に対し、取引上重要な事項について「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」をしてはならないということです。もっと簡単にいいますと、お客さんが、もしも契約する前に知っていたならば契約をしないようなことを、隠したりしてはいけないということです。
それでは、例えば前の入居者がアパートのその部屋で首を吊って死んだという事実がある場合、事実告知の義務にもとづいて、それをお客さんに伝えるべきなのでしょうか?それとも、秘密にしていた自殺のあった部屋が大っぴらになってしまうと大家さんの不利益になるので、守秘義務にもとづいて伏せておくべきなのでしょうか?あるいは、首吊りがあって気味が悪いのは精神的な問題であって、トイレの流れが悪いとか上の階の足音が響いてうるさいというような、物件の構造上の欠陥とは異なるので、取引上重要な事項には該当しないのでしょうか? 長くなってしまったので、このつづきは次回のうらばなしでお話いたします。
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